CyberArkのEPVに見つかった”Critical”に分類されるコード実行バグ。CyberArkは修正済。

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Cyber​​Ark Enterprise Password Vaultで、”Critical”に分類されるリモートコード実行脆弱性が発見された。

ドイツのサイバーセキュリティ会社であるRedTeam Pentesting GmbHが発見した。(画像のリンクは同社のブログ記事)

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脆弱性が見つかったEPVとは

そもそも、エンタープライズパスワードマネージャ(EPV)は、組織が機密パスワードを安全に管理するソリューションである。

EPVを使えば、クライアント/サーバーおよびメインフレームオペレーティングシステム、スイッチ、データベースの広範囲にわたる特権アカウントパスワードを制御し、外部の攻撃者や悪意のある内部者から安全に保つ事が出来る。

個人向けのパスワードマネージャ代表例としては、LastPassや1Passwordが有名である。

EPVは、企業向けのパスワードマネージャと考えればいいだろう。

脆弱性の概要

攻撃者がCyber​​Ark Enterprise Password Vaultにある脆弱性を悪用すると、Webアプリケーションの権限でシステムに不正にアクセスする可能性がある。

この脆弱性(CVE-2018-9843)は、Cyber​​Ark Password Vault Web Accessに存在する。

Cyber​​Ark Password Vault Web Accessは、顧客がリモートで任意のサービスにログイン出来るようにするアプリケーションで、.NETで書かれているようだ。

ディシリアライズ操作に存在するバグ

Webサーバが、ディシリアライズ操作を適切に行わないバグが存在し、攻撃者は、サーバ上でコードを実行して、不適切にディシリアライズされたデータを悪用する。

そもそ、シリアライズとは、オブジェクトをバイト列に直す操作を意味し、ディシリアライズはその対義語。

つまり、ディシリアライズはバイト列からオブジェクトを復元する操作のことだ。

研究者によると、ユーザーが自分のアカウントにログインすると、アプリケーションはREST APIを使用してサーバーに認証要求を送信する。

この時、認証要求はbase64エンコードされ、シリアル化された.NETオブジェクトを含む認証ヘッダーを含む。

この時、シリアル化された.NETオブジェクトは、ユーザーのセッションに関する情報を保持している。

しかし、RedTeamの研究者は「CyberArkのEPVでは、シリアル化されたデータの整合性が保護されていない」と指摘した。

サーバーはシリアル化されたデータの整合性を検証せず、ディシリアル化操作を安全に処理していなかった。

その結果、攻撃者は認証トークンを操作して認証ヘッダーに不正なコードを挿入すれば、Webサーバー上で認証されていないリモートコードを実行できるのである。

 

CyberArkは修正、パッチ版を公開済

研究者は、オブジェクトの安全でない直列化を実行する.NETアプリケーションのペイロードを生成するためのオープンソースツールであるysoserial.netを使用して、この脆弱性のPoCコードをリリースした。

また、この脆弱性はCyber​​Arkに報告され、修正されたCyber​​Ark Password Vault Web Accessをリリース。

今回の脆弱性の詳細、PoCコードの詳細発表は、リリース後に行われた。

Cyber​​Ark Password Vault Web Accessを使用する企業は、ソフトウェアをバージョン9.9.5,9.10、または10.2にアップグレードするといいだろう。

ソフトウェアをすぐにアップグレードできない場合は、回避策としてroute / PasswordVault / WebServicesでのAPIへのアクセスを、全て無効にすべきだ。

サイバー空間で行われる戦争。『「第五の戦場」サイバー戦の脅威(by 伊藤寛)』を読んでのレビュー。

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最近、伊藤寛氏の『「第五の戦場」サイバー戦の脅威』という本を読んだ。

この記事に簡単に本書のあらすじや、私自身が感じた事を綴っていきたい。

伊藤寛氏について

まず始めに、著者である伊藤寛氏に関して略歴を述べる。

伊藤寛氏は、陸上自衛隊シマンテック社の主任研究員を経て、現在はセキュリティ企業であるラック社の執行役員を務めている。

他にも、『サイバー・インテリジェンス』、『サイバー戦争論:ナショナルセキュリティの現在』の著者であるようだ。

この本に書かれている事

この本は、サイバー攻撃を、戦争・政治的な観点から分析している。

簡単に言うと、「サイバー攻撃」と、「従来的な戦争」の2つを対比して、いかにサイバー攻撃が孕むリスクが大きいかを述べる。

本書はまず「日本が大規模なサイバー攻撃を受けた場合どのような事態に陥るか」を読者にイメージさせる為に、サイバー攻撃が発生したある朝”を一人の会社員の視点で見た寓話で始まる。

IoTの進展であらゆる物がインターネットに繋がれている現代社会において、組織的な大規模サイバー攻撃が発生した場合、日常的に使用している社会インフラが停止してしまう。

そうした混乱から二次・三次災害が発生し、最悪の場合、人間の命が失われる可能性があるかもしれない。

本書の中盤では、実際に日本をはじめアメリカ、ロシア、中国政府がサイバー空間をどのように捉え、攻撃を受けた際にどのように対応するかを紹介している。

最後に、現代社会において様々なテクノロジーで遅れをとっている日本が、サイバーセキュリティの分野でどのように挽回出来るのかを提案する。

 

この本をオススメしたい人

この本をお薦めしたい人は、以下の3グループ。

  • サイバーセキュリティ分野に関心のある非エンジニア
  • 非技術者と接する機会の多いセールスエンジニア・コンサルタント
  • サイバーセキュリティがどのように戦争の手段として使われるか関心のある人

この本には、サイバーセキュリティに関連の技術には殆ど記述が無い。

読者の対象は、コンピューティングやインターネット技術に関する知識が全くない人である。

つまり、技術的に関心の強い人には「読み物」として受け取られ、技術的な記述を期待する読者には物足りない内容だと思った。

だが、セキュリティエンジニアや、顧客に対してソリューションを導入する職務を担うコンサルの人たちにも読んでもらいたい。

なぜなら、この本は「技術に詳しくない人たちに対して、サイバーセキュリティを強化する事の重要性をどのような言葉を使って説明すればいいか」を知れる本だからだ。

著者の伊藤寛氏は、セキュリティ専門化で現在はラックの執行役員も務めている。

セキュリティ専門家として講演も数多く行っているようだが、対象は技術者に留まらず、幅広い。

したがって平易な言葉でサイバーセキュリティの重要さを説いて回らねばならず、技術的な説明を技術的な詳細無しで説明する場面に何度も遭遇してきた事が伺える。

実際に本書を通読してみても、難しいコンセプトの説明を出来るだけ省いて、平易な言葉でセキュリティ政策の改革を訴えている。

 

本書の弱点

私がこの本を読んだ際に思った弱点をあげるならば、以下の二点になる。

  • サイバーセキュリティ描写が大げさ過ぎる事
  • 初版が2012年の為、記載内容が古い事

それでは以下に、この二点に関して説明していきたい。

サイバー攻撃の描写がドラマティックすぎる

まず一点目として、サイバーセキュリティ描写が大げさ過ぎると感じた。

「0と1の電気通信のやり取りでしか無いサイバー攻撃」を、「従来的な戦争」と対比することで、あたかもピストルやライフルのような武器であるかのように描写している。

戦争を戦地で経験したことのある兵士からすれば、恐らくサイバー攻撃と従来的な戦争の間に存在するギャップは大きいであろう。

私自身は戦争を経験したことがないが、戦争映画・ドキュメンタリーの戦闘シーンや、戦争経験者の体験談などを聞くと、「サイバー攻撃=戦争」とはすんなり言えない。

”ドラマティックな描写の意図とは”

では、何故著者の伊藤寛氏は、サイバー攻撃を「戦争」としたのか。

 

それは、本書の読者のメインターゲットが「日本のサイバーセキュリティを増強すべき事に気づいていない人」だからであろう。

読者自身のスマホやPC等のインターネットに繋がれた端末のセキュリティを見直させ、日本政府が定めたセキュリティ関連の法律の変更に至るまでの変化を起こす為には、少々過激すぎる描写も必要だろう。

②初版が2012年の為、記載内容が古い

二点目は、初版が2012年の為、記載内容が古い事だ。

技術革新が進むに伴って新しい書籍がどんどん出版される今、2012年に出版された本なので、古い本なので読む価値が無いのでは?と思う人もいると思う。

この本は、過去に発生したサイバー攻撃(イランの原子力発電所を襲ったStuxnet等)に関する情報や、日本を始めとする先進国のサイバーセキュリティ関連の法律の説明がされている。

出版時点から法改正が行われたり、新たな技術が開発された事で本書で指摘された問題点が克服された点もある。

だが、先進国が「何故そのような法律を定めているのか」という法律の背景にある思想まで踏み込んで記述されているので、初版からの時間の経過に関わらず参考になる点は多いと感じた。

サイバーセキュリティを強化する事が、国益を守る事に繋がると気づき始めた国は多く、法改正が繰り返されている。

日本もそれに倣って、どんどん改正案が出されていくだろう。

本書は、2000年代に世界が抱えていたサイバー空間の問題を記述しているので、数十年後の未来に「世界がどのような歩みを行なってきたか」振り返る際に役に立つはずだ。

 

私が本書を読んだ目的

そもそも私がこの本を読んだ理由は、以下の二点である。

  • サイバーセキュリティ分野における研究を行う為の研究用参考文献として
  • 業界外の人たちにもセキュリティの重要さを知って貰う為の見本として

以下に、それぞれの点に関して説明していく。

①サイバーセキュリティ分野における研究を行う為の研究用参考文献として

まずは、サイバーセキュリティ分野における研究を行う為の研究用参考文献として読んでみたいと思ったからだ。

私は、「日本やアメリカ政府はどのようなサイバーセキュリティ関連政策を取るべきか」というテーマで研究しようと考えている。

本書を読んだ事で、そのアイデアを読む前よりは漠然とした考えが言語化されたと思う。

伊藤寛氏の著された関連書籍はまだまだあるので、もっと読んで頭の中にある疑問をクリアにしたい。

②業界外の人たちにもセキュリティの重要さを知って貰う為の見本として

もう一つの理由は、業界外の人たちにセキュリティの重要さを知ってもらう際に、どのように説明したらいいか見本が欲しかったからである。

私は、本ブログでセキュリティに関するニュース記事を書いている事で、同業者の繋がりが出来た。

同業者なら技術に対する理解があるので、専門用語をゼロから解説することなく会話する事が出来る。

だが、それだと業界内でしか話が通用しなくなってしまい、業界の外にいる人達にセキュリティの重要さが伝わらなくなってしまう。

著者である伊藤寛さんは、セキュリティのプロフェッショナルでありながら非技術者に対しても講演を行うなど、業界の垣根を超えてサイバーセキュリティの意識改革を行っている人だ。

そうした人が、どのようにサイバーセキュリティ関連の技術や、サイバーセキュリティにまつわるリスクを説明しているのか、気になった。

現代社会では、殆どの人がスマホを使ってインターネットにアクセスする状況において、セキュリティは生活とは切り離す事の出来ない分野になったと感じている。

そうした状況で、身の回りの人たちのサイバーセキュリティ意識を高めていく為に、自分はどうしたらいいのだろうか。

ーー本書を読んで、伊藤寛氏のように人々の行動を促す人になりたいと感じた。

 

Auth0 IDプラットフォームに発見された認証バイパスの脆弱性。

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thehackernews.com

"ID-as-a-Service"プラットフォームの最大手であるAuth0に、重大な認証バイパス脆弱性が発見された。

悪意のある攻撃者は、この脆弱性を悪用すると、認証にAuth0を使用するポータルまたはアプリケーションにアクセスできる可能性がある。

Auth0とは

Auth0は、ソーシャルメディア認証をアプリケーションに統合する機能を含む”IDentity as a Service”である。

多くのプラットフォームで、トークンベースの認証ソリューションを提供している。

Auth0は、2000以上の企業を顧客として抱え、同サービス上では毎月4200万ログインが行われている。

発見された2つの脆弱性について

CVE-2018-6873

セキュリティ会社”Cinta Infinita”のセキュリティ研究者は、Auth0のLegacy Lock APIにバグ(CVE-2018-6873)を発見し、同社のブログで公開した。

このAPIは、JSON Webトークン(JWT)のオーディエンスパラメータの不適切な検証をする目的で存在する。

研究者は、Auth0認証で実行されているアプリケーションに対して、簡単なクロスサイトリクエストフォージェリCSRF / XSRF)攻撃用コードを使用し、この脆弱性を悪用したログイン認証の回避に成功した。

CVE-2018-6874

また、脆弱性はもう一つ存在する。

攻撃者は、Auth0のCSRF脆弱性CVE-2018-6874)を悪用すると、別のアカウントに対して生成された有効な署名付きJWTを再利用して、標的とする被害者のアカウントにアクセス出来る。

攻撃者が必要なのは、シンプルなソーシャルエンジニアリングの技を使用して取得できる、犠牲者のユーザーIDまたは電子メールアドレスのみである。

攻撃のデモンストレーションビデオ

セキュリティ企業は、認証トークンを偽造してAuth0の管理ダッシュボードにログインする際に、犠牲者のユーザーIDとバイパスパスワード認証を取得したことを示すPoC(proof-of-concept)ビデオをリリースした。

以下は、そのPoCビデオである。

www.youtube.com

 

研究者によれば、この攻撃は多くの組織に対して再現可能のようだ。

攻撃には、JSON Web Token(以下、JWT)を使用する。

簡単に説明すると、JWTとは幾つかの命令を含み、サーバーサイドで秘密鍵(又は証明書)と共にサインされたJSONオブジェクトである、

JWTのセキュリティが担保されているのは、サーバーサイド(つまり、管理者)が秘密鍵(又は証明書)を保持している事に依存しているのである。

セキュリティ会社は、2017年10月にAuth0セキュリティチームにこの脆弱性を報告。同社は非常に早く行動し、4時間以内に脆弱性の修正を行なったようだ。

ただし、Auth0の脆弱なSDKとサポートされているライブラリがクライアント側で実装されているため、この問題を一般に公開する前に、Auth0は各顧客に連絡してから、完全に脆弱性を解決するのに約6ヶ月を要した。

Cinta Infinitaによって発見された特別なケースの修正とは異なり、Auth0チームは、この問題は、顧客がライブラリ/ SDKのアップグレードを強制することなく解決する事が出来なかった。

影響を受けたライブラリを大幅に書き直し、新しいバージョンのSDK(auth0.js 9とLock 11)をリリースすることで、この脆弱性を緩和した。

Cinta Infinitaは、この脆弱性を一般に公開するまでに6ヶ月間待っていました.Auth0チームには、社内のすべてのSaaSアプライアンス(オンプレミス)をアップデートするのに十分な時間が与えられた。

技術的な詳細は、以下のCinta Infinitaのブログから確認できる。

Knocking Down the Big Door

Silent Librarian--4年間も同じ手法を使い続けたイラン系フィッシンググループ。

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www.bleepingcomputer.com

先週、イラン系のクラッカー集団は世界中の300以上の大学をハッキングしていた容疑で逮捕、起訴された

同集団の呼称は、Mabna Hackersだ・

PhishLabs社が、今回起訴されたクラッカー集団を追跡していたとされ、同社は報告書を3月26日に公表した。

ハッカーは同じ「ライブラリ」を4年間継続して使用

去年PhishLabs社がMabna Hackersの存在に気づいた2014年2月以来、Mabna Hackersはフィッシングメールを継続して4年間使っていたという。

ちなみに、PhishLabs社は追跡を行っている最中は、MabnaHackersに対して「Silent Lbrarian」というコードネームをつけていた。

このブログでは、Silent Librarianという呼称で以下、統一する。

捜査当局がSilent Librarianの起訴に至るまで数年を要した事から、彼らの手口が非常に巧妙だったことが伺える。

Silent Librarianの使用していた電子メールは、大学のネットワークからのメッセージであり、ユーザーに図書館アカウントの再開を求めるメッセージだった。

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(アメリカの大学に在籍する大学生に対して送られたフィッシングメールPhishLabsから引用。)

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(オーストラリアの大学に在籍する大学生に対して送られたフィッシングメールPhishLabsから引用。)

 

Silent Librarianのフィッシング詐欺

PhishLabs社のThreat IntelligenceディレクターのCrane Hassoldは以下のように語る。

「Silent Librarianによって作成されたフィッシング詐欺用ツールは、一般的なフィッシングメールに比べて本格的。」

「悪意のある電子メールの主な指標の2つであるスペルと文法はほぼ完璧。ルアーのメッセージは文脈上合法。被害者たちが受け取っても全くおかしくない電子メールだった。」

すべての電子メールは、偽装された電子メールアドレスから来たもので、ネットワーク内から来ているように見える。

実在する大学図書館のURLを可能な限り模倣しており、本物ドメインへのリンクも含まれていた。 

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(大学が所有する本物のURL。PhishLabsから引用。)

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電子メールは、ターゲットとする各大学、図書館員の名前、電子メール署名に合わせ、高度にカスタマイズされていた。

 

フィッシングの成功を支えた”巧妙な手口”

「Silent Librarianのフィッシングキャンペーンは、時間の経過に反して、ほとんど変化していません」とHassold氏は語る。

また、同氏は以下のように付け加えた。

「何点かのスペルミスの修正以外では、フィッシングメールの内容は非常に一貫している」

「この一貫性の理由は、これらのルアーを使用したキャンペーンの成功率が十分高く、進化する必要がないということだ」 

FBIの調査では、Silent Librarianは21の外国で144の米国の大学と176の大学を侵害し、31.5テラバイトの学術データと知的財産を盗んだようだ。

Silent Librarianは10万人以上の教授を対象に、8,000件のアカウントを正常に侵害した。この他にも、学生も狙われていたようだ。

 

PhishLabsはアカウント販売するサイトを発見

Silent Librarianは、これらのアカウントのログイン認証情報を収集する事が狙いだったのだ。

盗まれたアカウントは、これらの私立大学ネットワークに保存されている学術研究と知的財産を抽出するために使用されたのである。

Silent Librarianのハッカー達は、盗み出した情報をイランのイスラム革命警備隊(Islamic Revolutionary Guard Corps、略してIRGC)に渡した。

更に、盗まれたアカウントは、Silent Librarianのメンバーの一人が運営する2つのWebサイト(Megapaper.ir(Megapaper)とGigapaper.ir(Gigapaper)でアカウントの販売を行った。

 

また、ハッソルド氏は、FBIが見逃していると思われる第3のウェブサイト(Uniaccount.ir)も発見したとし、ドメインデータによれば、このウェブサイトも先週の9人のハッカーのうちの1人が運営しているという。

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(アカウントが販売されていたサイトのトップページ。BleepingComputerから引用。)

 

したがって、同じ手法を使い続けたSilent Librarianのようにフィッシングキャンペーンを成功させた例はめったにない。

だが、フィッシング詐欺を変えないことで、ハッカーたちは、PhishLabsの社員が追跡して操作当局に渡すことが出来てしまった。

そうした意味では、効果的なフィッシングキャンペーンとは言えない。

Facebookの個人情報取扱いに疑問の声。「創設以来最大の間違い。本当に申し訳ない」ザッカーバーグ氏。

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thehackernews.com

過去2日間にFacebookの市場価値が600億ドル以上下落した。

この額はテスラ・モーターズ時価総額以上で、Snapchatの3倍近い。

ここまで甚大な時価総額の下落をもたらしたのは、英国のデータ分析会社「ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)」がFacebookから取得したデータの使用方法に関わる。

同社は、ドナルド・トランプ氏が2016年に米国大統領に就任する手助けをしたデータ分析を専門とする企業だ。

事件の発端は、同社の社員であるクリス・ワイリー(Chris Wylie)が、Facebookが人々の個人情報をどのように扱っているかを新聞へ行なったリークである。

ワイリー氏は、ケンブリッジ大学の学者として働いていた28歳のデータ科学者だ。

Wylieはケンブリッジアナリティカが様々な情報源から収集した個人情報に基づいて市民の投票パターンを予測し、政党がカスタマイズした広告やメッセージで投票者をターゲットにするのを助ける「Steve Bannonの心理誘導ツール」を作成したと供述。(訳注:原文では”Steve Bannon's psychological warfare mindf**k tool”という名前で表記されている)

先週から多くのことが起こっているので、これまでに「FacebookとCambridge Analytica」の間で何が起こったのか、どう進展したか説明するために記事をまとめた。

 

ケンブリッジアナリストが50万人のFacebookユーザーのデータを収集する仕組み

4年前、ケンブリッジ大学の心理学者Aleksandr Kogan氏が、研究者Michal Kosinskiにアプローチした。

Kogan氏の狙いは、Facebookのユーザーデータを入手する為に、Kosinski氏と共同で簡単なオンラインパーソナリティクイズアプリを作成。

ユーザーはクイズに解答するためにはFacebookにログインして参加する必要がある。

Kosinski氏は自分のアプリが収集したデータを提供することを拒否したが、ケンブリッジ大学はKogan氏に80万ドル以上を支払って同様のクイズアプリを作成し、Facebookのユーザーのプロフィールデータを収集し続けたようだ。

この時Kogan氏が作成したクイズアプリ「thisisyourdigitallyife」は多くのユーザーに利用されたクイズアプリとなった。

27万人のFacebookユーザーが参加することになったにもかかわらず、FacebookAPIは当時、アプリを利用したユーザーの友人に関する情報までも収集していたのだ。

Facebookユーザーは、友達リストに平均何百人もの友人がいるので、Kogan氏は27,000人のユーザーベースを活用して、約5,000万人のFacebookユーザーのデータを収集したのだった。

今すぐFacebookデータを使用してサードパーティのアプリケーションを停止しよう

Cambridge Analyticaのクイズアプリだけでなく、Facebookのタイムラインでは他にも何千ものアプリが存在する。

たとえば以下の様なものだ。

  • 80歳になった時にどんな顔してるかチェック
  • 似ている有名人は誰かチェック
  • 今年のバレンタインの相手は誰かチェック

Facebookのすべてのアプリは、自分のFacebookアカウントを使ってアクセスし、自分の名前、場所、メールアドレス、友人リストなど、Facebookのプロフィールからさまざまな情報をアプリの開発者に与えるようユーザーの許可を求める。

この他にも、何十万ものウェブサイトで「Facebookでログイン」オプションがある。

そのオプションは、サイト管理者がワンクリックログイン/サインアップを提供してあなたの身元を簡単に確認できるようにする。

つまり、クイズアプリと同じように機能するのだ。

Facebookのデータにアクセスする許可を与えたサードパーティのアプリケーションを再訪し、データを使用したくない場合は完全に取り消すことなく、アプリのパーミッションを制限できる。

アプリのデータへのアクセスを無効にする手順

デスクトップコンピュータの右上隅にある下向き矢印をクリックし、メニューから[設定(Settings)]を選択。

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次に、左メニューの中から、[アプリ]を選択する。

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Facebookにログインしているすべてのアプリが表示される。

モバイルデバイスでは、メニューを開き(iOSは右下、Androidは右上)、[設定]→[アカウント設定]→[アプリ]→[Facebookでログイン]を選択する。

画像はiOS端末で操作している。

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十字アイコンの横にある編集ボタン(鉛筆アイコン)をクリックして各アプリの設定を表示することで、アプリの権限を制限出来る。

ここから、各データポイントの横にあるチェックマークの選択を解除して、特定の権限を取り消せる。

Facebook創設者Mark Zuckerberg、ケンブリッジアナリストのスキャンダルについて謝罪

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CNNのLaurie Segallとのインタビューで、Facebookの創設者Mark Zuckerbergは、ユーザーのプライバシーを守らなかったことについて謝罪。

Zuckerberg氏は、Laurieに対して以下のように語った。

「これは重大な信頼の侵害であり、このような自体が発生したのは残念な事である。」

Zuckerberg氏は、ケンブリッジ・アナリティカのスキャンダルに対処しながら、サードパーティの開発者がユーザーのデータにアクセスできるような仕様になっていたのは、大きな間違いであった事を認めた。

更にZuckerberg氏は、以下のようにコメントしている。

"今までで犯した間違いの中で、最大の間違い"

Zuckerberg氏は、「すべての問題を解決し、FacebookAPIの乱用を防ぐために、同社が2014年以降どのようにポリシーを変更したのかを説明しつつ、今後はユーザーのプライバシーを保護する」ことを、世界中の顧客と株主を保証に対して約束した。

インタビューの最後に、Zuckerberg氏は、「(Facebook)プラットフォームの完全なフォレンジック監査を実施して、第三者のアプリが完全な同意なしにユーザーデータにアクセスし、データが不適切に使用されたと見られるすべてのユーザーに通知する」と述べた。

ザッカーバーグ氏「技術企業を規制する時」

一部の専門家は、ソーシャルメディア企業に対する消費者のプライバシーを保護するために、より厳しい政府規制が必要と考えている。

Zuckerberg氏もこの意見に同調し、ユーザーの個人情報を取り扱うテクノロジー企業に対して多くの規制を課すべきだと考える。

また、増加し続ける20億人ものユーザー・コミュニティを効果的に統制するためのツールとして、「人工知能」を推奨しているようだ。

Facebookは、本年末までに、セキュリティとプライバシーの運用を厳密に監視するために、新たに2万人以上の従業員を雇うとされている。

Facebookは個人情報の利用に関する国際調査に直面

ケンブリッジ・アナリティカに関するリークの後、世界各国の政府がFacebok社に対して厳しい目を向けている。

具体的に言えば、アメリカ、EU、英国、イスラエル、インド、カナダ等の国である。

以下に、各国政府のFacebook社に対する調査をまとめる。

アメリカ

米国連邦取引委員会(FTC)は、Cambridge Analyticaによって5,000万人以上のユーザーの個人情報の使用が、Facebookが2011年に代理店に署名した同意判決に違反しているかどうかを調査し始めている。

EU

欧州委員会は、データ保護当局にFacebookのデータ漏洩をCambridge Analyticaに調査するよう依頼。

同委員会がデータ保護法に違反すると判断すれば、同社に罰金を課す可能性がある。

イギリス

イギリス政府は、欧州委員会の調査とは別に、ケンブリッジアナリティカによってFacebookユーザーのデータが削除されたかどうかを調べるために、現地調査を令状をFacebook社に突きつけた。

イスラエル

イスラエル司法省はFacebookに対して「行政捜査」を行なった。

イスラエル人の個人情報の追加違反の可能性がある事をFacebookに勧告。

 

Cambridge Analytica CEOの極秘音声が公開

ケンブリッジ・アナリティカは、同企業の取締役を解任した。

ビデオが放映されたため、政界の選挙を動揺させる賄賂や売春婦の使用についても議論を進めているようだ。

取締役会の見解では、Nix氏の最近のコメントはチャンネル4で秘密裏に記録されているが、その他の主張は、彼の停止は、我々がこの違反行為を見る深刻さを反映している」と語った。

ちなみに、Nix氏は、ロンドンのチャンネル4ニュース(The Channel 4 News)が公開したビデオで、相手が賄賂を提供している捜査官のビデオを録画するなど、政治家のために汚い犯罪に取り組んでいることを明らかにしたのだ。

また、Nix氏は、潜在的スリランカのクライアントと位置づけられたジャーナリストにも、彼の会社が候補者の居場所に「いくつかの女の子を周りに」送って候補者を妥協させる事もできるとビデオの中で語っている。

しかし、ケンブリッジ・アナリティカはビデオの中でNix氏が述べたような戦術に関与したことを否定。

ケンブリッジ・アナリティカを発端とした今回の事件は、Facebookだけでなく、生活のためのユーザーデータを販売する他のすべてのオンライン会社にとっても大きな意味を持つ事件である。

なお、Facebookの株式は、この執筆時点で、2.66%低下して164.89ドルになったようだ。

(This article is a Japanese translation of "Facebook and Cambridge Analytica – What's Happened So Far" at The Hacker News.)

超音波を使って画像を転送?MOSQUITOで身近なイヤホンやスピーカーが感染経路になる危険性も

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thehackernews.com

セキュリティ研究チームは、同じ部屋に置かれた2つ(またはそれ以上)の「エアギャップPC」が秘密裏に超音波でデータを交換する’MOSQUITO’という手法を公開した。

このチームは、イスラエルのベン・グリオン大学の研究者で構成されるチームある。

彼らは先月、攻撃者がファラデーケージ内で保護されたエア・ギャップ・コンピュータからデータを盗む方法を示したばかりである。

今回の記事では、彼らが公開した手法に関して掘り下げていく。

エアギャップPCとは

同チームが公開した手法について理解するためには、まずエアギャップPCについて理解する必要がある。

エアギャップPCとは、システムがインターネットおよびローカルネットワークから隔離され、ファラデーケージというだいぶ野電場を遮る特別な筐体に覆われたPCの事である。

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(ファラデーケージに入ったPC筐体。MOSQUITOの論文より引用。)

エアギャップPCには、USBフラッシュドライブまたは他のリムーバブルメディアを介してデータにアクセスするための物理的アクセスを必要とすることから、最も安全な設定であると考えられている。

MOSQUITOについて

イスラエルのBen Gurion大学の研究チームが発見した手法であるMOSQUITOは、特定のオーディオチップ機能を利用して、接続されたスピーカー(パッシブスピーカー、ヘッドフォン、またはイヤホン)をマイクに変えてしまう。

2年前、同じチームの研究者が、感染したコンピュータに接続されたヘッドフォンをバグリスニングデバイスのようなマルウェアを使用して逆転させるだけで、攻撃者があなたの部屋の秘密の会話を秘密裏に聞くことができる方法を示した。

同チームは更に研究を進め、最新の研究を発表。

もともとマイクとして機能するように設計されていないスピーカー/ヘッドホン/イヤホンですらも、リスニングデバイスに変えてしまう方法を発見したのだ。

この手法は、マイクがミュートされている、録音されていない、またはオフになっている際に役に立つ。

一部のスピーカー/ヘッドホン/イヤホンは、超音波に近い範囲(18kHz〜24kHz)にうまく反応するため、研究者らは、このようなハードウェアをマイクとして機能させることが出来る事を証明。

監視の目を盗んで2台のコンピュータのスピーカとヘッドホンを使ってデータを交換するためには、可聴音であってはならない。

その為、人間の耳が聞き取ることが出来ない超音波を使えば、とあるスピーカーと別のスピーカー間でデータのやり取りを行うことが出来るのだ。

MOSQUITO攻撃のビデオデモ

38歳のMordechai Guriが指揮するBen GurionのCyber​​security Research Centreは、高い分離度にもかかわらず、2つのエアギャップコンピューターを互いに話すために超音波トランスミッションを使用する。

コンセプト実証ビデオの研究者が実証した攻撃シナリオには、同じ部屋に2台のエアギャップコンピュータが含まれている。

これらのコンピュータは、リムーバブルメディアを使用してマルウェアに感染していますが、データを交換して攻撃者のミッションを達成することは出来ない。

以下のデモ・ビデオでは、パンダの画像を超音波を使って別のコンピュータに転送している様子が示されている。

youtu.be

 

攻撃シナリオとして、以下のケースが考えられる。

スピーカーからスピーカーへの通信

スピーカーからヘッドフォンへの通信

ヘッドフォンからヘッドフォンへの通信

 

最大15メートルの通信も可能

スピーカーからスピーカーへの通信は、最大9メートル離れた2つの空中ギャップコンピューター間で秘密裏にデータを送信するために使用できる。

さらに、2つの(マイクレスの)ヘッドフォンが3メートル離れた場所からデータを交換できることを示している。

しかし、ラウドスピーカーを使用することで、8〜15メートルの距離から10〜166ビット/秒の有効ビットレートでデータをエアギャップコンピュータで交換できるようだ。

興味深い研究結果を発表し続けるBen−Gruion大学の研究者

Ben-Gurionの研究者がエアギャップコンピューターを標的とする秘密の技術を思いついたのは初めてではないようだ。

エアギャップPC間でデータ転送を行う研究以外にも興味深い研究を行っている。

以下に、その研究と説明書きを箇条書きで示す。

  • aIRジャンパー攻撃は、夜間視力のために使用される赤外線装備のCCTVカメラの助けを借りて、エアギャップPCからの機密データを盗み出す手法である。
  • USBeeは、USBコネクタからの無線周波数送信を使用して空中にあるコンピュータからデータを盗むために使用できる。
  • DiskFiltrationは、エアギャップのあるコンピュータのハードディスクドライブ(HDD)から放出されるサウンド信号を使用してデータを盗む。
  • BitWhisperは、2台のコンピュータ間の熱交換を利用して、パスワードとセキュリティキーを隠密に窃取する手法。
  • AirHopperは、コンピュータのビデオカードをFMトランスミッタに変えて、キーストロークをキャプチャする手法。
  • Fansmitterは、CPUファンが発するノイズを使用してデータを送信する手法。
  • GSMem攻撃は、セルラー周波数を使ってデータ送信する手法。

Mikrotikルータをエクスプロイトする”Slingshot”を操るAPTグループ。

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securelist.com

Kasperskyのセキュリティ研究者は、2012年以来から現在に至るまで巧妙に開発されたマルウェアを駆使して隠密に活動を行っていたAPTハッキンググループを特定した。

そのハッキンググループは、中東とアフリカの数十万人の被害者をルータにハッキングして感染させるために、高度なマルウェアSlingshot)を使用した。

同グループが使用するマルウェアの名前をとって、Slingshotというコードネームが付けられている。

この記事では、Kaspersky Labsが行なったが発行した25ページのレポート[PDF]に基づき、Slingshotに関して以下のポイントに分けてまとめていく。

Slingshotグループについて

Slingshot自体がどの国に属するグループかは判明していない。

現段階で、同グループに関して分かる情報は「巧妙に細工されたツールを高度に熟練したスキルで操り、英語を話す国または政府機関をバックにもつ”ハッキンググループ」のみである。

カスペルスキーのレポートによれば、

Slingshotマルウェアの構造は非常に複雑で、マルウェアの開発者は、開発に多くの時間と費用を費やした事が分かる。感染の広がり方は注目に値する」

と記されている。

尚、Slingshotのターゲットは広範囲に渡り、ケニア、イエメン、リビアアフガニスタンイラクタンザニア、ヨルダン、モーリシャスソマリアコンゴ民主共和国、トルコ、スーダンアラブ首長国連邦など、多くの国々の政府機関が含まれている。

Slingshotが最近行った攻撃について

このグループは、ラトビアのネットワークハードウェアプロバイダであるMikrotikのルーターの未知の脆弱性をエクスプロイトした。

スパイウェアを被害者のコンピュータに感染させるために、Mikrotikルーターを踏み台として利用したのだ。

またカスペルスキーは同レポートにおいてWikiLeaksが公表したCIAVault 7 CIA Leaks

GitHubで利用可能なChimayRedの脆弱性を明らかにし、Mikrotikのルータを侵害していることを明らかにした。

ルーターがエクスプロイトされると、攻撃者はDDL(ダイナミックリンクライブラリ)ファイルの1つを悪意のあるファイルに置き換え、ユーザーがWinbox Loaderソフトウェアを実行した際に、ターゲット端末のメモリに細工されたコードを直接ロードする。

ちなみにWinbox Loaderは、MikrotikがWindowsユーザー向けに設計した公式管理ツールである。

ルータからDLLファイルをダウンロードしてシステム上で実行するルータを簡単に設定出来る。

以上のようにして、悪意のあるDLLファイルがターゲットコンピュータ上で実行され、リモートサーバーに接続して最終的なペイロード、つまりSlingshotマルウェアをダウンロードする。

Slingshotマルウェアに関する概要

Slingshotの目的は、情報収集、潜伏、データの外部送信である。

 

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(Slingshotの挙動に関する図。KasperskyLabsのレポートより引用。)

 

また、Slingshotマルウェアには、2つのモジュールで構成されている。

以下のセクションでそれぞれについて説明していく。

Cahnadrについて

Cahnadrモジュール(別名NDriver)に備わる機能は以下になっている。

  • アンチ・デバッグ
  • ルートキット
  • スニッフィング機能
  • 他のモジュールの注入
  • ネットワーク通信
  • その他、基本的にユーザー・モード・モジュールが必要とするすべての機能

Cahnadrのカーネルモードプログラムは、ファイルシステム全体をクラッシュさせたり、ブルースクリーンを目立たせることなく、悪意のあるコードを実行する。

また、Canhadr / NDriverは、純粋なC言語で書かれている。

その事から、デバイスのセキュリティ制限にもかかわらず、HDDとオペレーティングメモリに完全にアクセスする事が出来、さまざまなシステムコンポーネントの整合性を制御する事が出来る。

つまり、システム管理者によるリバースエンジニアリングや、セキュリティ検出を妨げる機能を持っている。

GollumAppについて

GollumAppは、以下の様な機能を備えている。

  • スクリーンショットのキャプチャ
  • ネットワーク関連の情報の窃取
  • Webブラウザに保存されたパスワード、キー・ロギング
  • リモートのコマンドと制御サーバーとの通信を維持するスパイ機能

GollumAppはカーネルモードで動作し、SYSTEM権限で新しいプロセスを実行することもできるため、攻撃者は感染したシステムを完全に制御するとされる。

TechnicalAnalysisに関しては、KasperskyLabsのレポートが参考になる。

 

Memcached DoS攻撃を自動で緩和するツールがリリース。

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www.bleepingcomputer.com

セキュリティ研究者のAmir Khashayar Mohammadi氏は、Memcachedサーバー経由でDDoS攻撃を受ける犠牲者を支援する新しいツール「Memfixed」を発表した。

Pythonで書かれたこのツールは、開発者がMemcachedプロジェクトに提出した緩和手法をベースに開発された。

この緩和手法は、被害者のネットワークを攻撃しているMemcachedサーバに "flush_all"コマンドを送信することから成り立っている。

尚、DDoSの防御をサービスとするセキュリティ企業Coreroも検証済みである。

MemfixedはMemcached DDoS攻撃の防御を自動化

Mohammadi氏が開発したツールは、Memfixedを作成して緩和プロセスを自動化する。

被害者は、Memfixedを使用して、一部の各IP、または複数の攻撃IPのグループに「flush_all」コマンドを送信出来る。

flush_allコマンドは、DDoS攻撃を実行している悪意のあるペイロードを含むMemcachedサーバーのキャッシュメモリを消去する。

Memfixedは、攻撃側のサーバに「シャットダウン」コマンドを送信する機能もサポートするようだ。

しかし、実際には別のサーバをシャットダウンすると、誤って重要な操作に悪影響する可能性があるため、この方法の使用はお勧めできない。

Memfixedを使用するための簡単な手順

このツールを使用する最も一般的なシナリオは、複数の攻撃サーバーのリストにflush_allコマンドを送信することだ。

Memfixedを起動する前に、攻撃するIPのリストを作成し、ツールと同じフォルダにservers.txtという名前のファイルに保存する必要がある。

リストには、以下の形式のように、1行に1つのIPを保持しなければならない。

0.0.0.0

0.0.0.0

0.0.0.0

Memfixed起動すると、一連のプロンプトが表示される。

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(Memfixedを起動すると表示される画面。Bleeping Computerより引用。)

1つのIPアドレスまたは複数のIPアドレスに対してツールを使用するかどうかを尋ねる最初の質問では、「すべて」を選択する。

Memfixedは、Shodan APIを使用して攻撃対象のIPアドレスのリストを収集し、ローカルに保存されたデータ(別名servers.txtファイル)を表示する。

次に、CLIに "2"を入力してflush_allメソッドを選択する必要がある。

Memfixedは、迷惑メールトラフィックDDoS攻撃の一部)でインフラストラクチャに衝撃を与えているservers.txtファイルにあるすべてのIPにMemcached固有のflush_allコマンドを送信する。

開発者であるMohammadi氏は、Bleeping Computerに攻撃を緩和するMemfixedツールを示す以下のスクリーンショットを提供。

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(Mohammadi氏が提供したスクリーンショットBleeping Computerより引用。)

ちなみにMohammadi氏は、MemcachedをベースにしたDDoS攻撃を自動化するツール”Memcrashed”というPoCツールを以前にリリースしたのと同じセキュリティ研究者である。

(This article is a Japanese translation of ”Technique Discovered That Can Mitigate Memcached DDoS Attacks” written by Catalin Cimpanu at BleepingComputer.)

仮想通貨取引所Binanceがハッキング被害?お金を失ったのは、なんと”ハッカー”

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インターネット上で最大の暗号通貨取引所の1つであるBinanceは、巧妙に細工されたフィッシングキャンペーンが発生している事を公表した。

フィッシングを行なったハッカーは、何千人ものユーザーアカウントがBitcoinを売り出し、Viacoin(VIA)というAltcoinを購入したのだ。

その売買は3月7日、UTC協定世界時)14時58分-14時59分に発生した。

一見するとBinanceがハッキング被害に遭ったように見えた為、ユーザーの多くはTwitterRedditなどのソーシャルメディアに以下の様にコメント。

偽のBinance URL

実は、これはハッキングでは無く、巧妙に緻密に用意されたフィッシングキャンペーンであった。

ハッカーたちは2か月間のフィッシング詐欺を実施

Binanceチームが公表した昨日の攻撃の準備のためのインシデントレポートによれば、ハッカーはBinanceのユーザーアカウントの認証情報を収集するために、過去2か月間にフィッシングキャンペーンを実施。

ハッカーは、”binance.com”とパッと見ただけでは区別の付かないドメイン”bịnạnce.com”を取得したのである。

目を凝らして見ると、「i」と「a」の文字の下に小さなドットがある。これは、Latin-lookalike Unicode文字で書かれている。

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(ブラウザ上で表示されたbịnạnce.com。BleepingComputerより引用。) 

 

1月上旬頃から始まったキャンペーン

1月上旬頃からフィッシングキャンペーンが開始されたが、Binanceチームは、キャンペーンがピークに達した2月22日頃に、操作が増えたという証拠を発見したという。

Binanceはこのフィッシング詐欺行為を追跡した。

フィッシング詐欺のページは、Binanceのトップページと全く同じように作成されており、ユーザーの認証情報を受け取った後は、Binanceログインページにすぐにリダイレクトする。

実は、このような操作だった為、Binance開発者が検出した参照ログにフォレンジックトレイルが残っていたのである。

同社のCEOは、昨日TwitterでこれらのログのスクリーンショットTwitterで共有。

ハッカーはアカウントにアクセスしAPIキーを生成

一般的な仮想通貨口座ハッキングだと、盗み出したアカウントにログインした後は、ウォレットの中身を全て送金してを空にする。

しかし、ハッカーはアカウントごとに「取引APIキー」を作成したのである。

APIキーの準備が終わったハッカーたちは、昨日遂にメインの攻撃を開始したのだ。

ハッカー達はまず、APIキーを使用してBitcoinを譲渡したBinanceアカウントで取引を自動化し、ハッカーが事前に作成した他のBinanceアカウント31個から、自動的にViacoinを購入した。

しかしハッカー達が行なった「2分以内に異常な量のBitcoin-Viacoinの売り注文」としてBinanceプラットフォーム上のリスクマネジメントシステムに検知されてしまった。

お金を失ったのは、ハッカーの方だった

自らが行なった攻撃が不成功に終わった事を悟ったハッカーは、31個のBinanceアカウントにあるVIAを現金化しようとしたが、Binanceはそれらのアカウントにおける引き出し操作を無効化した。

さらにその後の調査では、BinanceがハッカーAPIキーを作成したとされる31の口座を全て特定し、取引を取り消し、ハッカーが口座に入金した元のViacoinの資金を没収した。

したがってハッカーは、今回のフィッシングキャンペーンからの売買によって、攻撃に先立ち予め用意していたVIAコインを全て失ってしまったのだ。

尚、彼らが失った金額は現在不明とされている。

Memcached DDoS攻撃を緩和するコマンド

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Memcachedサーバー経由でDDoS攻撃を緩和する仕組みが用意されつつある。

flush_allコマンドで緩和

DoS攻撃の被害者が、攻撃側のサーバに「flush_all」コマンドを打つだけの単純な緩和方法である。

Memcachedのサーバー開発者の1人であるDormandoが、先週提案した。

この手法は、今まで多くの人に注目される事はなかったが、Coreroのプレスリリースによって多くの人から注目を得たようだ。

Coreoは、この手法を同社が提供する”DDoS軽減ソリューション”に統合し、ライブ攻撃中に「100%正常に機能する」と公表している。

Coreroの専門家は、「flush_all」を打つ手法について「副次的な被害は認められていない」と述べた。

MemcachedサーバーからのDDoS攻撃を受けている企業の中には、DDoS軽減サービスを受けることができない企業があるかもしれない。

そうした企業は、Dormandoが推奨する2つの手法ーー「flush_all」か「shutdown」ーーを自社システムに実装すればいいだろう。

これらのコマンドを実行すると、攻撃サーバをシャットダウンするか、DDoS攻撃の増幅効果を引き起こす悪質なパケットをキャッシュから消去する。

 

開発チームはMemcachedをv1.5.6にアップデート

これらのDDoS攻撃は、Memcachedサーバーがオンラインでアクセス可能である事が原因で発生している。

デフォルト設定でポート11211を公開しており、攻撃者はこれを使用してDDoS攻撃を反映、増幅しているのだ。

この脆弱性を修正するために、Memcachedチームは、2月27日に、Memcached v1.5.6をリリースした。

このリリースでは、デフォルトでUDPプロトコルを無効にする。

ユーザーはMemcachedサーバーを展開するときには、ユーザー自身がUDPサポートを有効にする必要がある。

 

脆弱なMemcachedサーバーの数が減少する

Memcachedの開発チームが行なった設定変更だけでなく、ユーザー側もMemcachedの使用を控えるようになっているようだ。

Rapid7は、インターネット上で公開されているポート11211のMemcachedサーバーが、3月1日に18,000台から3月5日に12,000台に減少したことを発表。

セキュリティ研究者のVictor Gevers氏は以下のようにTwitter上でコメントしている。

他の数字の減少の理由としては、クラウドサービスプロバイダーがMemcachedの停止を促しており、脆弱なサーバーに関しては強制的に停止する事例もある事が挙げられるだろう。

Memcachedに見つかった”別の欠陥”

どうやら、Memcachedサーバーを使用するユーザーがすべき対処は、DoS攻撃の対処だけに留まらないようだ。

Coreroは、DDoSの脆弱性が「当初報告されていたのよりも広範囲であり、脆弱なMemcachedサーバからのデータを盗み出したり、データの改ざんが行われる可能性がある」とコメントしている。

Coreoは同社が持つ情報をNSAに提供したと公表している。NSAがセキュリティ・アラートを公開する日も近いだろう。

 

(This article is a Japanese translation of ”Technique Discovered That Can Mitigate Memcached DDoS Attacks” written by Catalin Cimpanu at BleepingComputer.)

ランサムウェア”GandCrab”のバージョン2がリリース。

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セキュリティ企業のBitdefenderルーマニア警察、EuropolがランサムウェアGandCrabの共同調査を行っている。

彼らは、先週GandCrab RansomwareのCommand&Controlサーバーに対して(合法的に)ハッキングしてアクセスを行い、GandCrabの被害に遭ったファイルの一部を取得。

その後Bitdefenderは、被害者のファイルを復号化するツールを開発・リリースした。

この事を受けて、MalwareHunterTeamは、ランサムウェアの作成者であるGandCrabの開発者がより安全なC&Cサーバーを含むGandCrabの第2版をリリースした事を発見。

 

バージョン2には、バージョン1との差別化を可能にする変更が含まれている。

この記事では、バージョン1と比べて何が変わったのか等、GandCrab Ransomwareに感染しているかどうかを確認する方法を簡単に紹介する。

GandCrab v2になって変わった事とは

バックエンドにおける目立った変更点は、ランサムウェアのCommand&Controlサーバーのホスト名である。

新たなC&Cサーバーのホスト名は以下。

  1. politiaromana.bit
  2. malwarehunterteam.bit
  3. gdcb.bit

①のpolitiaromana.bitはルーマニア警察、②のmalwarehunterteam.bitはMalwareHunterTeamを指す文字列である事がみてとれる。

GandCrabの開発者は、操作を進める同機関・団体に対する”皮肉”を込めてこのような名前にしたと考えられている。

GandCrabは、暗号化する前にC&Cサーバーにアクセスする。もしアクセス出来ない場合は暗号化を行わない。

どのようにホスト名の解決をする為に、http://ipv4bot.whatismyipaddress.com/にアクセスして被害者のグローバルIPアドレスを割り出す。

 

その他の変更

その他に施された変更は、暗号化ファイルに使用される拡張子、脅迫文、支払い用ページである。

以下にそれぞれ項目を分けて見ていこう。

 

拡張子への変更

バージョン2のGandCrabでは、暗号化されたファイルのファイル名に.CRAB拡張子が追加されるようになった。

たとえば、test.jpgが暗号化されると、test.jpg.CRABという名前に変更される。

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(暗号化されたファイル。BleepingComputerより引用。)

 

脅迫文の変更

新しい脅迫文のファイル名はCRAB-Decrypt.txtである。

現在はToxインスタントメッセージングサービスを通じて開発者に連絡する方法が含まれている。

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(GandCrabの脅迫文。BleepingComputerより引用。)

 

支払いページの変更

GandCrab v2のTOR支払いページが刷新された。

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(身代金の支払い用ページ。BleepingComputerより引用。)

 

バージョン2の復号化ツールの有無

現段階ではバージョン2の被害に遭っても、復号化する手段が無い。

 

IOC

Hashes:

966a0852c8adbea0b7b7aada7c2c851ee642c7bca7da3b29ee143f47ddeb90a5

Associated Files:

CRAB-DECRYPT.txt

Ransom Note Contents:

---= GANDCRAB =---

Attention!

All your files documents, photos, databases and other important files are encrypted and have the extension: .GDCB

The only method of recovering files is to purchase a private key. It is on our server and only we can recover your files.

The server with your key is in a closed network TOR. You can get there by the following ways:

1. Download Tor browser - https://www.torproject.org/

2. Install Tor browser

3. Open Tor Browser

4. Open link in tor browser: http://gdcbmuveqjsli57x.onion/[id]

5. Follow the instructions on this page

On our page you will see instructions on payment and get the opportunity to decrypt 1 file for free.

If you can't download TOR and use it, or in your country TOR blocked, read it:

1. Visit https://tox.chat/download.html

2. Download and install qTOX on your PC.

3. Open it, click "New Profile" and create profile.

4. Search our contact - 6C5AD4057E594E090E0C987B3089F74335DA75F04B7403E0575663C26134956917D193B195A5

5. In message please write your ID and wait our answer: 6361f798c4ba3647

DANGEROUS!

Do not try to modify files or use your own private key - this will result in the loss of your data forever!

Ethereumネットワークを襲う”Eclipse Attack”

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Ethereumネットワークの開発者は、今週公開された研究論文に記述されている欠陥を修正するネットワークの基盤となるコードベースを更新する事を発表。

ボストン大学ピッツバーグ大学の研究者が発表した研究者の論文では、”Ecplise Attack”という、スマートコントラクト内に存在する脆弱性をエクスプロイトする攻撃手法が公開された。

Ecplise Attackは、脆弱なスマートコントラクトのピアツーピア接続スロットを塞いで独占し、ターゲットのノードをEthereumネットワークから隔離する攻撃手法である。

言い換えれば、最新のブロックチェーン情報がターゲットノードに到達することを防ぐことによって、ノードを全体のネットワークから分離するのだ。

実は、Bitcoinネットワークも、Eclipse Attackに対して脆弱だった事が、過去に公表されている。

Ecplise Attackの成功には”たった2つの”ノードで十分

Bitcoinネットワークのノードに対して日食攻撃を行うには、被害者のノードを1つだけ取り出すために数千の悪意のあるノードが必要である。

だが、攻撃者は別のノードを隔離して影響を及ぼすために2つの悪意のあるEthereumノードしか必要としない。

更に研究者は、他の多くのデジタル通貨やICOをサポートする多数のスマートコントラクトも、Ecplise Attackに対して脆弱であることを指摘した。

実は、Ethereumは暗号通貨の名前として一般的に知られているが、実は暗号通貨Etherの基盤となるノードのネットワークである自体の名前である。

今この瞬間も多くのプロジェクトが誕生しており、その殆どがEthereumネットワークを基盤とし、スマートコントラクト技術を応用したプロジェクトである。

つまり、ネットワークとしてのEthereumに存在する脆弱性は、それら数多くのプロジェクトで開発されているスマートコントラクトに影響がある事を意味するのだ。

Ecplise Attackで攻撃者が得るものとは

Ecplise Attackが成功すると、攻撃者は以下を達成する。

  • ターゲットのマイニングパワーを奪い、ブロックチェーンの合意形成アルゴリズムを損なう攻撃を仕掛ける
  • 二重支出、自分に有利なマイニングを行う
  • ターゲットに偽のトランザクション情報を表示する事で、ターゲットに気付かれずにEtherを盗み出す
  • Ecplise Attackを受けたノードでブロックチェーンエクスプローラーを閲覧出来ないようにする(この時、スマートコントラクトには、Ethereumネットワークの情報を参照するパラメータもある為、想定しない情報が出力される事がある。)

 

Ethereumノードに対して修正を公開

この論文を公開した研究チームは、論文の公表で済ませず、Ethereum Foundationと協力して、Ecplise Attackの原因であるバグを静かに修正する。

研究者らは、開発チームに対してさまざまな対策を推奨し、既に2週間前にリリースされたEthereumノードで動作するソフトウェア1.8.0に修正を適用したと発表。

バグの修正は、Ecplise Attackを完全に防ぐわけではない。

なぜなら、攻撃を実行するために必要な悪意のあるノードの数を2から数千に増やしただけだからだ。

それでも攻撃を成功させる為の難易度が上がったことには間違いない。

もし興味があれば、公開された論文を読んでみるといいだろう。

34,200のEthereumのスマートコントラクトにバグが存在

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Ethereumのスマートコントラクトを対象に実施したスキャンで、34,200ものスマートコントラクトに脆弱性が存在している事が明らかになった。

それらのスマートコントラクトには、Etherを盗み出す事が出来る。

スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは、第三者コントラクトに対して何かしらのインプットを行なった際に、予め自動的にプログラムされた命令文を実行するコードである。

現在Ethereumは、ビットコインに次いで時価総額2位になっており、その人気を支えているのが「スマートコントラクト」である。

スマートコントラクトという機能を利用して、これまで膨大な数のプロジェクトが誕生しており、毎日の様にICOが行われている。

スマートコントラクトにもバグが存在する

スマートコントラクトは、他のプログラムされたコードと特に変わらない。

Solidityという独自の言語で書かれているプログラムと思えばいい。

つまり、他のプログラムに存在する様なバグが存在する事を意味する。

2016年夏に、何者かがDAOというプロジェクトから5千万ドル分のEtherを盗んだ事件が発生した。

DAOが盗まれた際にエクスプロイトされたバグは、シンガポール国立大学のセキュリティ研究者によって発見されたバグだったのだ。

2016年に、Ethereumのスマートコントラクトに存在するバグを発見するOyenteというツールを作成した。

当初、研究者チームはOyenteを使って19,366ものスマートコントラクトをスキャンしたが、その時は8,833ものコントラクトが脆弱である事がわかった。

その時の研究成果はメディアの注目を得ることがなかった為、研究者たちが鳴らした成果は多くの人の目に留まることはなかった。

Parityのインシデントから新しいスキャンツールが誕生

さらに2017年秋に、スマートコントラクトのバグを悪用してEtherを盗み出すインシデントが発生した。

ハッキングはDevops199というGitHubユーザーによって行われた。

ParityというWalletの中身に存在していたバグを発見し、2億850万ドル相当のEtherを盗み出したようだ。

このインシデントが、前述したシンガポール国立大学のセキュリティ研究者チームが、スマートコントラクトのバグをスキャンするツールを改良した。

その名もMaianという。

同チームがMaianを使って970,898ものスマートコントラクトを対象にスキャンを実施したところ、以下の画像のような結果になった。

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彼らはスキャン結果から、スマートコントラクトを3つに分類した。

  • Prodigal
    • 攻撃を受けると97%の確率でEtherを任意のEthereumアドレスに送信するコントラクト。
  • Suicidal
    • 攻撃を受けると第三者によってKillされてしまうスマートコントラクト。
  • Greedy
    • 攻撃を受けるとEtherを受け取る事が出来るが送付する事が出来ないコントラクト。あるいは、Etherを受け取る事すら出来なくなるコントラクト。

Maianのソースコードは非公開

Oyenteのソースコードが2016年に公開された結果DAOのハッキングインシデントが発生してしまった。

そうした背景から、セキュリティ研究者チームは更なるハッキング被害を防ぐためにMaianのソースコードは公開していない。

Mythrilというツールが既に公開されているので、スマートコントラクトの脆弱性に関してリサーチしたい読者は調べてるといいかもしれない。

Memcachedを悪用したDoS攻撃のペイロードにMoneroアドレスを挿入しランサム要求

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https://blogs.akamai.com/2018/03/memcached-now-with-extortion.html

先日、Memcachedを悪用したDDoS攻撃に関する記事を書いたが、現在もMemcachedをリフレクターとして利用してDDoS攻撃が続いている。

Akamaiの調査によれば、Memcachedを悪用して発生させるDDoS攻撃の手法に変化が生じているようだ。

その名も「Ransom DoS攻撃」(以下、RDDoS攻撃)である。

”Moneroを支払え”とだけ記載された脅迫文

これまでに確認されているMemcachedを悪用した攻撃は、リフレクターに対してランダムな文字列を含むパケットを送信する事で、リフレクターが増幅して応答を返す手法であった。

しかし、RDoS攻撃は、リフレクターに送信するランダムな文字列の代わりに短いメッセージを挿入して送信するようだ。

とあるクラッカー集団は、脅迫文に50XMR(Monero)とMoneroアドレスを支払う旨を書き、リフレクターに送信するUDPパケット内に挿入した。 

以下に示したMemcachedから発せられたパケットのペイロードは、Akamai Prolexicを使用する顧客に対する攻撃の最中にキャプチャしたものである。

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注意深く見てみると、2行目以降は以下の文字列が延々と書かれている事が分かる。

・Pay_50_XMR_To_{{Moneroアドレス}}

50 Moneroは、執筆時点(2018/03/03)ではおよそ$16,000(USD)程度の価値がある。日本円に換算すると、169万円だ。

身代金を支払う必要なし

Radwareのセキュリティ研究者は、RDoS攻撃で脅迫されている通りに身代金を支払ったとしても、何の意味もないとコメントしている。

なぜなら、Memcachedを悪用してRDoS攻撃を引き起こしている攻撃者は、複数のターゲットに対してRDoS攻撃を引き起こしているにも関わらず、共通のMoneroアドレスを用いているからだ。

つまり攻撃者は、ターゲットから身代金を受け取ったとしても、どの攻撃の被害に遭ったターゲットかを判別することが出来ないのだ。

第二次世界大戦中に知られる「東京大空襲」のように、攻撃者は手当たり次第RDoS攻撃を仕掛け、攻撃の脅威に怯えたターゲットの一人でも身代金を支払わせるようにRDoS攻撃を行っている様に見受けられる。

詳細説明がない脅迫文

またAkamaiの調査によれば、攻撃者は脅迫文の中に支払いに関する説明文を含んでいないようだ。

一般的にランサムウェアには、支払い方法の説明文を詳細に記し、攻撃者に対して質問出来るようにEメールアドレス等の連絡先が記されている。

そのような説明を記す事で、ターゲットの反応を知ることが出来、支払いが完了したと共に暗号化を解く。

だが、Memcachedを悪用してRDoS攻撃を引き起こしているクラッカー集団は、そうした説明文や連絡先すら用意していない。

したがって、たとえ被害者がDoS攻撃を止めるために身代金を攻撃者に送付したとしても、攻撃者は誰から送られて来た身代金かどうかは区別出来ないのだ。

最初のRDoS攻撃は2015年に確認

RDoS攻撃という手法が最初に確認されたのは2015年。

その時には「DDoS-for-Bitcoin」と呼ばれ、DD4BTCというクラッカー集団が使用していた攻撃手法とサれている。

DD4BTCは既に逮捕されたが、RDoSという手法だけは別のグループに受け継がれ、Armada Collectiveや、XMR Squad、LulzSecのようなクラッカー集団がRDoS攻撃を引き起こしてきた。

以下に、Bleeping ComputerでカバーされたRDoS攻撃に関するニュースがあるので興味のある人は読んでみるといいだろう。

Memcachedサーバーの脆弱性を突いたリフレクション攻撃が急増。JPCERTも注意喚起を実施。

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https://www.jpcert.or.jp/at/2018/at180009.html

ここ数日間でMemcachedを悪用したDDoS攻撃が急増している。

個人的にMemcachedについては存在すら知らなかったので、ゼロから調べた際にメモを作成し、ニュースに絡めて紹介する事にした。

その為、この記事はMemcaechedを悪用したDDoS攻撃を理解する為の前提知識から説明していく形になっている。

この記事では以下のように大きく3つのポイントに分けて説明する。

前半部分は基本的知識の説明に終止する為、既に理解している読者は後半部分まで飛ばし読みして構わない。

Memcachedとは

Memcachedとは、Webアプリケーションの高速化・スケーラビリティを配慮して作成されたソフトウェアである。

Danga Interactive社のBrad Fitzpatrick氏が中心になって開発された。

一般的にWebアプリケーションは、RDBMS(リレーショナル・データベース管理システム)にデータを格納し、アプリケーション・サーバーがデータを引き出してブラウザに表示する。

この時、RDBから取り出すデータが大量になったり、RDBへのアクセスが集中すると、RDBMSの負荷が上がってしまう。

その結果、RDBからのレスポンススピードが下がり、Webサイトの表示が遅延する自体に陥る。

Memcachedは、WebアプリケーションのからRDBへ行われる問い合わせ結果を一時的にキャッシュする。

そうすることで、Webアプリケーションからデータベースへのアクセス回数を減らし、Webアプリケーションの高速化、スケーラビリティ向上を図れる。

参考URL(外部リンク)

リフレクション攻撃について

このセクションでは、以下のポイントに分けてリフレクション攻撃について説明していく。

  • リフレクション攻撃とは
  • リフレクション攻撃の手順(簡略版)
  • リフレクション攻撃が発生する条件

リフレクション攻撃とは

(追記: リフレクション攻撃に関する記述に誤った表現があり、修正致しました。

_hiro(@papa_anniekey)さん、ご指摘&改善案のご提示ありがとうございます。edited by Ichi at 2018/03/02)

送信元から送られたリクエストに対して、反射的に応答をするものをリフレクターと呼ぶ。

リフレクターを利用して行われるリフレクション攻撃は、コネクションレスプロトコルであるUDPの特性を悪用して行われる。

UDPを用いるプロトコルとしては、DNSをはじめ、Syslog、SNMP、NTP、そして今回話題となっているmemcachedが挙げられる。

UDPがリフレクタ攻撃の要となっている理由は『攻撃元の隠ぺいが容易』である事だ。

攻撃元の隠ぺい技術は、IP Spoofingと呼ばれる。

HTTPで用いられるTCPのようなコネクション型プロトコルは、3Way-Handshakeで知られるように、実際のデータ・ペイロードのやり取りを行う前に、必ず通信を行う為の〝前準備=3回の通信”が必要となる。

しかし、UDPの場合のようなコネクションレスプロトコルの場合、この"前準備"は必要ではない。

一方的に通信を送り付けると受信した側はIPヘッダに書かれている送信元IPアドレスを送信元と判断してそこに対してリクエストの内容に応じたResponseを一方的に返す。

これを悪用すると、IPヘッダを偽装(IPヘッダにターゲットを記載)することで任意のターゲットに対し、応答パケットを「送り付ける」事が可能となるのである。

 

リフレクション攻撃の手順

リフレクション攻撃を行う為の、簡単な手順は以下のようになる。

  • 攻撃者は、送信元IPアドレスを、DDoS攻撃の対象となるIPアドレスにSpoofしたリクエストパケットを作成する。
  • そのリクエストをMemcachedサーバーの11211番ポートに向けて送信する。
  • Memcachedサーバーは、攻撃者から送信されてきたリクエストに応じて応答を返す。応答は、攻撃者により設定された任意の送信元IPアドレス(=攻撃のターゲット)に”返送”される。
  • このリクエストを送信する際、攻撃者はリフレクターから返送される応答の結果が、できるだけ大きくなるようなリクエスト(コマンド)も含めて送信する。
  • その結果、応答のサイズが攻撃者のリクエストと比較して大きくなり(=増幅され)、攻撃としてインパクトが生まれる。

リフレクション攻撃の参考例

以下のshodanから取得した画像は、リフレクターにパケットを送信した後に、増幅されて返送されてきた応答の例である。

画像内の一行目の”stats”が、リフレクターに対して送信したリクエストで、二行目以降がリフレクターから返送されてきた応答である。

TCPを使用しているので今回の攻撃で使われている手法とは異なるが、リフレクターがこのような返答をするというイメージを掴むには良いだろう。

 

f:id:nanashi0x:20180302165746j:plain

(画像は任意のIPアドレスを入力して出力した結果)  

 

リフレクション攻撃が成立する条件とは

リフレクション攻撃が成立するための条件は、主に3つある。

  • 送信元IPアドレスの詐称(IP Spoofing)によって攻撃可能なこと
    • 攻撃者がIPアドレスを詐称した問い合わせがリフレクターに到達可能でなければいけない。送信元IPアドレスは自己申告制である。つまり”なりすまし”が可能なのだ。攻撃者はこれを利用して、ターゲットとなるノードのIPアドレスを送信元として指定したパケットを、リフレクターに送信する。そうすることでリフレクターからの増幅された応答を届けられる。
  • リフレクターが数多く存在する
    • Webサーバーがリフレクターとなり得る。すなわち、攻撃対象となるリフレクターの数が多ければ多いほど、リフレクターを用いた攻撃がしやすくなる。
  • リフレクターの増幅率が高い事
    • 攻撃者が第一弾としてリフレクターに対して送信するパケットのサイズを、リフレクターがサイズを増幅してパケットを返す事になる。この時、”問い合わせ”に対する”応答”のサイズ比が大きければ大きいほど、リフレクター攻撃の効率が上がる。

Memcachedを悪用したDDoS攻撃の概要

さて、本題であるMemcachedを悪用したDDoS攻撃の概要と被害状況に関して説明していく。

DDoS攻撃について

DDoS攻撃は、MemcachedサーバーでデフォルトでONになっているUDPポート11211番を送信元として世界各地に存在するサーバーに対して行われている。

つまりMemcachedのリフレクター機能を踏み台としてDDoS攻撃を行っている状況である。

ArborNetworksの調査では、今回のMemcachedを踏み台として行われているDDoS攻撃は、最初にスキルの高い攻撃者によって手動で行われ、徐々にメソッドがDDoS-for-hireボットネットを通して非常に短期間で拡散していったと見られている。

Memcachedを起因とするDDoS攻撃の規模

Qihoo 360が公開しているDDoS Monのデータを以下に示す。

2月下旬までは比較的フラットな推移をしていたのだが、ここ数日間でMemcachedを悪用したリフレクション攻撃が急増。

f:id:nanashi0x:20180301142847p:plain

(Memcachedが悪用されて発生しているリフレクション攻撃の日別推移。DDoSMonより引用。)

 

Memcachedから送信されてくるパケット毎秒数(pps)は、最高値でおよそ23Mppsである。1秒毎のパケットサイズで言えば、そこまで大した大きさではないよう見える。

f:id:nanashi0x:20180301143053p:plain

(パケットサイズ毎秒の日別推移。Cloudflareより引用。)

 

しかしmemcachedから送信されてくるインバウンド・トラフィック帯域幅は、260gbpsに到達している。

f:id:nanashi0x:20180301143104p:plain

(帯域幅の日別推移。Cloudflareより引用。)

 

なお、Cloudflareが公開しているtcpdumpの結果は以下。検知されているパケットが使用する帯域幅は、およそ1400となっている。

単純計算で、23(Mpps) × 1400(bytes) ≒ 257(Gbps)となる。 

f:id:nanashi0x:20180301143138p:plain

(Cloudflareが行なった調査過程で実行されたtcpdump結果。Cloudflareより引用。) 

 

ソースIP

脆弱なMemecachedサーバーは世界各国に点在している。

f:id:nanashi0x:20180301142931p:plain

(ソースIPはアメリカ、ヨーロッパ、アジアと広範囲に渡る。Cloudflareより引用。)

 

また、Cloudflareの公開しているAS(Autonomous System)別に分けられたIPアドレスでは、フランスのクラウドサービスであるOVH、アメリカのDigitalOceanに次いで、日本のさくらインターネットが上位に入っている。

f:id:nanashi0x:20180301143013p:plain

 (殆どのクラウドサーバーがリストに入っている。Cloudflareより引用。)

踏み台にされない為の対策

Memcachedを利用しているかに関わらず、サーバーを管理している人は、自身のサーバーがDDoS攻撃の踏み台にされない為にアクセス制御を行う必要がある。

さくらインターネットMemcachedのアクセス制御を行うよう注意喚起を行ない、その中に3つの方法が示されていたので紹介する。

  1. Memcachedにアクセス可能なIPアドレスlocalhostに限定する。UDPを無効にする。
  2. Memcachedを使用していない場合はサービス停止、自動起動を無効化。不要の場合は削除。
  3. ファイアウォールを設定し、Memcachedが使用するポートへのアクセス制限。

 

上記した方法①に関しては、さくらインターネットの注意喚起ではCentOS7における手順が公開されているので参照してもらいたい。

 

追記:DDoS攻撃の史上最大規模を記録。リクエストが5万倍に増幅

2018年2月28日の17時21分〜17時26分の間、GitHub.comがダウンした。

Githubは自社のブログにてダウンした原因がMemcachedからのDDoS攻撃である事を公表した。

同社のブログによると、毎秒1億2690万パケット送信され、帯域幅は1.35Tbpsにも達したという。

同日の17時半ごろに1.35Tbpsに達する攻撃が発生し、18時過ぎに400Gbps程度の攻撃が再度発生している。

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(DDoS攻撃の規模を示す画像。GitHubから引用。)

追記:Memcachedに対して打つコマンド

Memcachedに対してリクエストを投げる際は、以下のようなコマンドを実行する。

追記:Memcachedを利用したDDoS攻撃はQihoo 360が2016年に指摘

ここ数日間で注目されているMemcachedを悪用したDDoS攻撃だが、実はこの手法は0Kee TeamのQihoo 360に所属する研究者によって指摘されていたようだ。

0KeeTeamが公開しているスライドはここから閲覧可能である。

恐らく今回DDoS攻撃を引き起こしている攻撃者はこのノウハウを知り、攻撃者間で共有したと思われる。

スライドの題名にもあるが、”2TB/s規模のDDoS攻撃の発生方法を示す手法”として指摘されているので、今後もDDoS攻撃の規模が拡大していくだろう。

追記:MemcachedのPoCが公開

本日(2018/03/07)、MemcachedをエクスプロイトしてDoS攻撃を行う為のPoCが公開された。

以下のリンクからGitHubにアクセス出来る。PoCはC言語で書かれている。

github.com

(追記日時: 2018/03/07PM)

追記:CVEデータベースに登録

Memcached脆弱性は、NVDにも登録されている。

・NVD - CVE-2018-1000115

(追記日時: 2018/03/08AM)

Memecached関連のリンク集

以下に、執筆時点(2018/03/01)でネット上で閲覧できるJPCERTの注意喚起、その他セキュリティ企業、ISPからの注意喚起へのリンクを掲載しておく。