暗号通貨投資家達が抱えている”ある矛盾”について。本人たちは気づいていない?

今日まで、毎日のようにブロックチェーン技術に関する文献を読み漁ったり、値動きを見たり、Slackのチャットに参加してきたわけだが、正直疲れてしまった。

その原因は、昨日の中国のICO禁止例である。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1709/05/news040.html

このニュースによれば、暗号通貨によるICOを一斉に禁止したことになる為、暗号通貨取引自体が禁止になったことでは無い。だが、昨日は中国関連のコイン(NEOやBNB等)の値段が一斉に下がった。それにつられて、BTCやETH等、代表格である暗号通貨の値段も一斉に暴落してしまった。私が保有しているコインはDNTが殆どで、既にDNTの値段は暴落していたので幸い損失はなかったし、これから先を展望すると暗号通貨の値段は上がっていくと思うので、全く心配はしていない。

だが、今回のイベントで気づいてしまった事がある。それは、結局、暗号通貨は政府に依存しているということだ。前提として、今のところ暗号通貨を支持している人達の多くは、リバタリアンというカテゴリに分類される。リバタリアンとは、政府や中央銀行メガバンクや大企業等、中央集権的なアクターに大きな力が集まっている事を批判している人達のことである。IT業界の界隈では多く見られる人種なのだが、暗号通貨が、個人として持てる力を増幅させる役割を持っている事から、リバタリアニズムとの相性も良い。その結果、暗号通貨の多くの支持者はリバタリアンによって構成されている。

リバタリアンの多くは政府や大企業の力に頼らずに、金銭的な独立を持って社会的に大きな力を持つことを望んでいる。昨日の中国政府によるICOの禁止によって大きく値段が下がってしまった事で、結局暗号通貨は政府の方針によって叩き潰されてしまうものであるという事だ。言い換えれば、政府が暗号通貨をサポートする政策を打ち出せば暗号通貨の値段は上がるし、その一方で、政府がその気になれば今つけている値段の何十分の一にも下げる事が出来るという事になる。

更に言えば、フィアットマネー(米ドルや日本円等の国によって発行される通貨)のように、暗号通貨を利用できるサービスが一気に広がって行く事には時間がかかると思っている。つまり、暗号通貨投資で幾ら含み益を増やしたとしても、ある時点で暗号通貨の投資家達は、フィアットマネーへの換金をすることになると思う。勿論のことだが、フィアットマネーの価値も、政府の政策によって決まる。という事は、暗号通貨にせっせと投資しているリバタリアンの多くの運命は、つまるところ政府によって握られている事になる。

この状況は私からすれば、皮肉としか思えない。それは、本来リベラリスト達は、政府のような中央集権的な役割を持つ組織の影響力から免れる為に暗号通貨に投資をしているにも関わらず、結局はリバタリアンは政府によって暗号通貨が政策としてサポートされる事を望んでいる事に他ならないからだ。無論、暗号通貨がリバタリアン以外の人達にも普及して、更なる投資が行われば値段も相応に上がっていくことだろう。しかしながら、そうした状況にあっても政府や大企業の手の上で暗号通貨投資家達が転がらされていることに他ならないと私には思える。

上記に述べた状況は、「中央集権的なイデオロギー」を打破しようとする、リバタリアン思想を持つ暗号通貨投資家の多くが抱えている矛盾であり、この矛盾の解消はされないであろう事を感じてしまった私からすると、少し興ざめする様な状況である。今後、この矛盾の折り合いが、どのように付けられていくのかはまだ想像できないので、暗号通貨投資をしつつ、今後の動向も見守っていきたい。